はり姫見学 体験記
2023.9月にCLAP研究会世話人でもある、産業医科大学から二人施設見学にいらっしゃしました。
見学の前日夜、ホテル着いたら飯でも行く?とさそっていたら、
なんと感染の症例が紹介になり緊急手術。ちょうど着いた頃に手術開始。
糖尿がベースにある易感染性の宿主、CRPは40超えで、足背前面に膿瘍形成あり
以前に脛骨遠位端の骨折に対して手術をした既往あり。舟状骨に骨溶解はあるが、脛骨には変化なし。
そこで「感染の主座」は「伸筋腱に沿った軟部」でそれが舟状骨から距骨まで波及と判断。
そこで、伸筋腱に沿ってiSAP tubeを留置、距骨にiMAP pinを立てて、舟状骨を経て皮下に至る骨孔を
作成して経路を構築。
慢性骨髄炎からの瘻孔形成か、軟部組織の炎症が深部にいたろうとしているのか?判断は難しいが結果的には両方の組織に抗菌薬が移行するように経路を構築。術前の評価、手術計画を立てて、複数のプランを用意して術中の所見により最終判断する。その方法を見てもらいました。
さて見学当日は、朝からCLAPの概念を紹介。普段、講演などでしゃべりきれないポイントを解説。
また、CLAPを行なった後の方が病棟にいるので、「病棟での管理」方法や、「術後の回復」を実際に
見ていただくことで実感できます。CLAPは回路が閉塞しないようにするのが重要、看護師さんと力を
合わせて閉塞を解除していく様子を観察していただく。
次に40台の男性、自閉症あり10代から施設に入所。10年前に上腕骨果部骨折に対して保存的に外固定で加療、しかしその後感染を合併した。10年以上1時間の道のりを車で受診することを繰り返す。
1年前にCLAPで偽関節はそのままにして感染を制御、創は閉じて処置が必要なくなっていました。
感染性偽関節を治し切ることは難しいので、最小限のダメージで元の生活に戻す。
再燃したらまた最小限のダメージで元の生活に戻す。CLAPの介入によりその再燃スパンが徐々に長く
なってくれたらいいのですが。今回も1年前と同様に走破して関節腔内にiJAPを留置。
夜は、飲みに行きながらこちらの若手の先生も交えてCLAP談義。ほんと感染の治療の話題はつきません。
2日目は30年前のTHAの感染。術後早期に脱臼してそのまま30年過ごされていたらしい70代の女性。セメントカップ&ステムの周囲から膿汁が噴出。後にstreptococcusと判明。
セメントもインプラントも緩んでいるので一旦抜去して、セメントを掻爬。一回では収まりきらず、
2回目の掻爬を行い、ようやく落ち着いたところで最初の手術から8週間でrevisionを行う症例。
セメント抜去に伴い近位の大転子部分に骨折あり、骨幹部のセメントを除去するときにそこにも小さなクラックがありました。完全に感染が落ち着いた確信は持てないのですが、骨折があり、死腔も多いので再置換のタイミングを失うとだんだん悪くなってそのままになることも。人工関節後感染ではあるのですが、骨折を伴うので骨接合後感染と考えると早く内固定をしないと感染は制御できないと判断。
ロングステムのデルタロックで骨折部をワイヤリングでまとめて遠位にスクリューを5本入れて固定。
iSAPとiJAPを留置して手術を終了。骨折部を切除してしまって腫瘍用のインプラントでセメント固定してもいいのですが、もし感染を合併したときに、髄腔が開存している機種のほうが抗菌ヤウをそこに流しやすいと考えます。ただ、普段使い慣れている機種で手術をするのがいいと思います。
2日を通して、感染の手術がたくさんあったことで術中に重要なことを、体感しながら伝えることができました。また、病棟には多くのCLAPを行なった患者様が入院されています。その方々の手術の動画や画像を見ながら、術後経過を見ていただくとCLAPの効果や手術の進め方がよく理解できるはずです。
2日間を通してお伝えしたいことはすべて伝えることができたかと思います。なかなかいくら1時間の講演をしても伝えきれないところは多いので、実際に見てみることは非常にためになると思います。
2日間の病院見学を終えて感じたこと
産業医科大学病院 救急・集中治療科 外傷再建センター 小杉 健二
平素より大変お世話になっております。産業医科大学病院 救急・集中治療科 外傷再建センターの小杉健二です。2023年9月12日、13日の2日間、兵庫県立はりま姫路総合医療センターに病院見学に行かせていただきました。
いまやCLAP全盛の時代ですが、学会やウェビナー等を聞くと、やはり施設間の成績にまだまだ差があり、何かしらのコツとピットフォールが存在するのだろうと常日頃感じていました。普段から自施設でもCLAPは積極的に行なっていますが、学会等で圓尾先生とお話させていただく機会があり、今回治療の実際を見学させていただくこととなりました。
CLAPを成功に導くコツとして、感染巣に対する洗浄やデブリドマンはもちろんですが、術前の感染巣の見極めが非常に重要で、骨シンチや超音波検査が有用であり、積極的に活用されていること、起因菌同定のための組織採取やその後の抗菌薬の選び方、そしてその感染巣を灌流するための回路の構築方法(K-wireを駆使して通路を作成)や手技の工夫を実際の手術で拝見することができ、大変勉強になりました。また、手術以外の時間にも、さまざまな自験例をレクチャーしていただき、その良好な臨床成績に大変感銘を受けました。
この2日間の見学を終えて、緻密な治療戦略と個々の患者のゴール設定が重要であることを学びました。この経験を日々の臨床に生かしていきたいと思います。短い期間ではありましたが、お忙しい中ご丁寧に対応して下さった圓尾先生をはじめ、整形外科の先生方に深く御礼申し上げます。また、快く研修に行かせて下さった善家先生をはじめ、産業医科大学のスタッフにもこの場を借りて改めて御礼を申し上げます。今後ともご指導ご鞭撻の程何卒宜しくお願い申し上げます。
兵庫県立はりま姫路総合医療センターを訪れて
産業医科大学病院 外傷再建センター 濱田大志
産業医科大学病院 救急・集中治療科 外傷性件センターの濱田大志といいます。この度、2023年9月12・13日の2日間、抗菌薬持続投与であるCLAP療法を見学するために県立はりま姫路総合医療センターに病院見学に行かせて頂きました。
訪れてみての印象は、全般的なCLAPの手技に関しては、手術中の灌流する経路をしっかりとK-wireで作っていると感じました。K-wireでより丁寧に骨の内部や軟部に灌流する経路を作成していました。目ではみえない抗菌薬の流れを妥協せず作っていることに、感銘をうけました。また、CLAPの術後管理に関しても、培養の提出方法・部位を適当に採取せず、しっかりと検体を提出していること、感染症や骨髄炎の画像評価にMRIや骨シンチを撮影して、しっかりと評価していること、ゲンタシンの廃液濃度までしっかりと採取されて評価されていることなど、とにかくしっかりと評価されているのが印象的でした。妥協せず細かく、丁寧に診療されているために、良好な成績につながっているのだと感じました。
さらに、圓尾先生は骨接合術が大変上手なのだと感じました。開放骨折の治療成績の良さを学会で発表されているのは拝聴しておりましたが、開放骨折治療に当たる際に、zone of injuryの開放創の周囲の皮切を展開せずに、ばらばらの関節内骨折をきれいに、その日に治療されていました。早期に骨の安定化を図ることで、周囲の軟部損傷を最低限に抑えることができ、良好な成績につながっているのだろうと思いました。私も今後経験を積んでいき、その域に近づけるように精進していきたいと思っています。
また、2日間の間、つきっきりで私たちにこれまでの治療経験の提示とポイントの説明をしてくださいました。大変勉強になりました。圓尾先生はじめ、整形外科の先生方には、大変良くして頂き、大変感謝しております。また、研修に行かせて下さった善家先生初め産業医科大学のスタッフにもこの場をお借りしてあらためて、御礼申し上げます。短い期間ではありましたが、この経験を活かして、今後の外傷医としてスキルアップしていきたいと思っています。今後とも何卒宜しくお願い致します。
姫路城を見ながら
ランチ